重大なリスク 感染症発生の可能性も…
「衛生管理区域内への無断侵入は大切な牛達の命を脅かします。絶対にやめて」。北海道の酪農家が3月27日夜、X(旧ツイッター)に、そう投稿した。
記者が投稿者と連絡を取り、詳細を聞いたところ、投稿から数時間前の夕方、友人が働く十勝地方の肉牛農場で、実際に無断侵入が起きたという。その農場の当事者にも話を聞くことができた。
農場の30代飼育管理担当者によると、無断侵入したのは観光客とみられる女子大学生2人。3月27日夕方、道路沿いの私有地の居住スペースに断りなく車で入り込み、さらに、その奥にある牛舎などが入る衛生管理区域に侵入。未経産牛を飼育する牛舎に近寄り、スマートフォンで牛の動画を撮るなどした。
農場の別の従業員が気付き、注意すると謝りはしたが「全く反省している感じがしなかったと聞いている」。
農場の飼育管理担当者は「毎日、衛生管理に細心の注意を払っている。出産を控え、繊細な状態になっている牛もいた」と説明。無断侵入は「あまりにも非常識」と憤る。病気が出たら自分の農場だけでなく「地域全体に影響が及ぶ」と訴える。
区域には消毒用の石灰を改めて散布。従来から掲示していた立ち入り禁止を知らせる看板も、より目立つように作り直している。
「畜産農家にとって、無断侵入は非常に恐ろしいことなんだと、多くの人に知ってほしい」。同担当者は強く訴える。
記事冒頭のXの投稿主である酪農家は「同じ畜産農家として、訴えに共感した。注意喚起に協力したかった」と狙いを話す。自身で作ったイラストを添えて投稿すると、2万4000回以上拡散され、表示回数は315万回を超える。
一般の人は「自覚ない」
家畜防疫に詳しい帯広畜産大学の草場信之教授は「生産現場が思っている以上に、一般の人はウイルス侵入への自覚はない」と指摘する。月末には大型連休を控え、各地で国内外からの観光客の往来も盛んになる。草場教授は、玄関口となる空港などに掲示するポスターをもっと目立たせるなどして「関係者一体で啓発を強める必要がある」と訴える。
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