トラクターや運搬車、サイロの事故など、残念ながら昨年も農作業死亡事故が相次いだ。今年こそは安全第一を徹底して無事故でいきたい。中央労働災害防止協会は、雇用労働者の命を守る「ゼロ災運動」を進めている。全員参加で危険の芽を摘み取り、根底から労働災害をゼロにする取り組みだ。農業もその理念と気概で農作業事故ゼロに挑もう。農作業で命を落とすことなんて悲し過ぎる。
ゼロ災運動は、人間尊重の理念に基づき、全員参加で安全衛生を先取りし、一切の労働災害を許さず、ゼロ災害、ゼロ疾病を究極の目標にして進められている。働く人々全員が、それぞれの立場・持ち場で労災防止に参加し、問題を解決する生き生きとした職場風土をつくる運動だ。「ゼロ」を掲げたことに堅い決意が分かる。
ここから学びたいことは、人間尊重の基本理念であり全員参加の運動だ。農業に置き換えれば、農業者だけでなく、あらゆる団体、機関、業界が農作業事故ゼロに向けた取り組みに参加することだ。それぞれが農業労災を人ごととしないことである。
農業は、機械化が進み、危険な産業になったことを共通認識にすることから始めよう。労災発生率は、危険産業と言われてきた建設業の2倍だ。畜産業は4倍にもなっている。その認識は、いまや世界共通だ。米国では「災害発生率の特に高い職種」として、漁業、林業、航空業、鉄鋼構造物組み立て業の次に「農業および牧畜業」を位置付けた(2008年)。死亡災害発生件数の高い順に並べると、農業および牧畜業の死亡事故は、317件でトラック運転手の次に多い。
その認識の下、国を挙げた取り組みが各国で進む。英国の安全衛生庁は「農業と建設業の死亡災害発生率の高さは特に注目すべきで、今後の重点対象」とし、対策を打っている。ドイツは、1976年に942人だった農作業事故による死亡者を2004年、255人にまで減らした。30年間で4分の1近くにした。農作業安全の専門家が農家を訪ねて、安全への意識を高めるとともに、農場や農機の危険なところを指摘、改善・指導する取り組みが成功した。
日本の農作業死亡事故は、農水省が調査を始めた1971年から直近データの2007年までの37年間、年に約400件起きている。それは、安全行政の弱さを物語る。農機の安全性も高まっているが、安全フレームがないトラクターなど古い農機も稼働しており、事故を断ち切れない。農業は高齢者の中でも80代以上の超高齢者の就農が増えつつある。この年代の事故率が特に高いことも事故が減らない要因だ。
安全への課題は多い。農業者、関係機関、団体がみんな本気にならなければ、事故ゼロは実現できない。日本の農作業事故は非常事態だ。










