3月にあった今年の獣医師国家試験で問題が漏えいした。試験問題が偶然に漏れたのか、あるいは意図的に漏らしたのかは、はっきりしていない。関係する2人の麻布大学教授の言い分が食い違っているからだ。また、国家試験の問題を作成する委員の選定作業が、内輪で進められていたことが分かってきた。企業の不祥事などでも情報公開が進んできた今、一般社会から見えないところで、試験問題を作成する委員を決めるような、なれ合い体質とも言えるやり方は変えるべきだ。
まず、第一に当事者となった麻布大学の2人の教授が、試験問題の作成に関与するまでの過程が分かりづらいことが問題だ。
農水省は当初、試験問題を作成していた生化学分野の専門委員が退官するため、この委員の推薦を受け、麻布大学の鈴木嘉彦教授に就任を打診した。鈴木教授は内諾。しかし任命手続きの過程で、鈴木教授の関係者が同じ大学に学生としていて、獣医師試験を受けることが分かった。そこで麻布大学の学長が、鈴木教授に就任辞退を促した。鈴木教授は関係者の受験を知らなかったのか。または影響はないと考えたのだろうか。
結局、内諾の1カ月後に鈴木教授は任命を辞退した。これを受けて農水省は、麻布大学に適任者の推薦を打診した。推薦されたのが生理学の西田利穂教授だ。西田教授は生化学でも研究実績があり、問題作成も可能だとの意向を示していると、大学側が伝え、委員に就任した。ところが、西田教授は問題作成の協力を、鈴木教授に依頼。鈴木教授から受け取った問題案を、西田教授が獣医事審議会の事務局に提出した。この問題案が鈴木教授の口から学生に漏れた。
農水省と大学という狭い社会の中で、国家試験の問題作成者を、なれ合いで決めている印象を受ける。委員の関係者が受験することや、専門分野は何かということは吟味されたのか。狭い社会では、常識の尺度が一般社会からずれることがしばしばある。委員選定の過程を明らかにして、一般社会から見えるようにすれば、不具合も見つけやすかったのではないか。不透明な任命をしてきた農水省にはもちろん問題があるが、なれ合い体質をつくった責任の一端は大学側にもある。
麻布大学では毎年、卒業生のうち140人ほどが獣医師になる。獣医の講座を持つ国内16大学の中で、1、2位を競う多さだ。毎年誕生する獣医は全国で1000人ほどだから、7、8人に1人は麻布大学の卒業生だ。畜産行政職にも卒業生は就き、獣医の世界では一大勢力といえる。その影響の大きさを、大学は自覚するべきだ。内輪で物事を決めていくうちに、学生や保護者からの信頼が失われてしまっては、麻布大学を卒業した獣医の信用もなくなりかねない。










