農水省は地球の環境保全について、農林水産分野で横断的な対策を講じるため「地球環境問題に関する有識者会議」を立ち上げた。同会議設立の背景には、温暖化の影響を避けることができない農林水産業が主役となって防止策を講じる必要と、温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書の第1約束期間が来年度に迫っている危機感がある。
京都議定書では、1990年を基準年に、2008年から12年までの5年間の平均で温室効果ガスを6%削減することになっているが、05年度には産業や運輸、民生部門等の排出増で、基準年比で7.8%上回り、約束達成に赤信号がともっている。総排出量に占める農林水産業の割合は3%程度で、燃料の焼却、家畜の消化管内発酵、家畜排せつ物の管理、稲作、肥料の施用、作物残さのすき込みなどが主要な排出源だが、基準年以降は減少傾向にある。
農水省が温暖化対策で「主導的役割を果たす」と積極的なのは、京都議定書の6%削減約束のうち、3分の2相当の3.8%を森林吸収源対策で確保することになっているからだ。林野庁は02年に策定した「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」に基づき毎年35万ヘクタールの間伐を続けてきたが、今年から20万ヘクタールを追加、年間55万ヘクタールの間伐を推進している。また、安倍首相の指示を受け、国土の3分の2を占める森林が「美しい国、日本」の礎となるよう官民一体となった「美しい森林づくり推進国民運動」も展開、「今が、地球温暖化を防止し、森林・林業・山村の再生を図るチャンス」と旗を振る。
同時に、政府は来年の洞爺湖サミットに向けて、50年までに温室効果ガスの排出半減を目指す「美しい星50」(クールアース)構想を打ち出すなどムードは高まっているが、削減手法など具体策はこれからだ。有識者会議では「間伐しても(割に合わず)山から木が下ろせない。間伐材を有効利用するかどうかは、ひとえに経済の問題だ」との意見があった。経済成長戦略と環境対策をどう調和させるのか、課題は大きい。
もう一つの柱はバイオマス(生物由来資源)の循環利用で、京都議定書の6%削減約束のうち約0.6%分の温室効果ガスを削減することになっている。しかし、政府が進める「バイオマス・ニッポン総合戦略」は始まったばかり。工程表では「バイオ燃料の大幅な生産拡大」をあげているが、ここでも採算性のほか、食料や飼料と競合しない間伐材等のセルロース系原料が利用できる技術開発が前提であり、容易ではない。
農林水産分野の地球環境対策は、持続可能な環境保全型農業、適切な管理ができる林業経営をよみがえらせることに帰結する。有識者会議には多面的機能を持つ農林水産業の振興を基本にすえ、地域資源を活用した循環型の温暖化対策を描いてもらいたい。









