米国の穀物を原料とするバイオ燃料に、「ノー」を突きつける時がきた。バイオ燃料が、穀物価格の高騰による世界的な食料危機の引き金となったことは明白だ。大義名分だった温暖化防止にさほど寄与しないことも分かってきた。推進国の米国は「バイオ燃料犯人説」を否定する。しかし、犯人説を裏付ける国際機関の報告が相次いでいる。
経済協力開発機構(OECD)は最新の報告で、「バイオ燃料生産への政府支援はコストが高く、温室効果ガスへの影響が限られている上に、世界の穀物価格に大きな影響を及ぼしている」と、そのマイナス面を指摘している。同報告によれば、欧米とカナダが、バイオ燃料の推進につぎ込んだ補助金は、2006年で年額110憶ドルにもなる。15年には250憶ドルに膨れ上がる。その間の温室効果ガス削減量はわずか0・8%にすぎないのに、食料価格をさらに押し上げ、10年後には、小麦5%、トウモロコシ10%、植物油19%の上昇を見込んでいる。
世界銀行の最新の分析によれば、バイオ燃料の影響で、世界の食料価格は75%上がったという。米国が、食料サミットなどで説明してきた「3%程度」とはかけ離れている。世銀は、米国がトウモロコシをバイオ燃料に向けたことが在庫の枯渇を招き、価格の高騰を招いたと名指しで非難している。米国のトウモロコシ畑の3割がバイオエタノール向けに変わり、近い将来半分に拡大するという。ブッシュ政権が国策として推し進めるバイオ燃料振興だが、世界の食料の不安定化を招いている。
今回の食料危機は、原油と食料価格が同時に上昇し、資源インフレを招くという過去に経験したことがないものだ。原油高と連動して、バイオ燃料向けのトウモロコシ価格が上昇する。そこに投機マネーが流入し、相場を上げていく。石油・穀物メジャーは空前の利益で潤っている。一方、世界では1日1ドル以下で暮らす約12億人の貧困層が飢えている。高値の食料を買えないのだ。乗用車のガソリンタンクを満たすバイオエタノールは、途上国では1人が食べる1年分のトウモロコシに相当するという。
バイオエタノールは食料と競合しない木材などセルロース系の植物からも生産できる。それを第2世代のバイオ燃料と呼ぶ。温暖化防止と食料供給のバランスを考えるなら、その技術開発が急務である。農水省は、わらなどソフト(草木系)セルロースを原料にしたモデル事業を始める。廃材や間伐材、海藻などを使った実用化も急がれる。地域資源を生かした再生可能な“日本型バイオ燃料”に期待がかかる。ガソリンや食品、生産資材の値上げが続く中で、食料とエネルギーのあり方、石油漬け農業の見直し、自給の大切さをあらためて考え直す時がきた。










