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食ナショナリズム

(2)政治/輸出解禁 先延ばし

豊かな黒土で欧州の穀倉地帯と呼ばれるウクライナ中部の小麦畑

  過去2年間で小麦の国際相場は3倍に値上がりした。その間に2回の急騰場面があった。1つは歴史的な干ばつでオーストラリア産の不作が確定的になった2006年9月。もう1つが、ウクライナ政府による穀物の輸出規制が直接のきっかけとなった07年夏だ。

  ウクライナ政府は07年7月1日付で穀物の輸出割当制度を導入した。10月1日まで小麦、大麦、トウモロコシ、ライ麦についてそれぞれ3000トンの上限を設けた。同国は多い年には小麦だけで600万トンを輸出する。「これは事実上の輸出禁止である」。キエフに駐在する米農務省の担当官は、7月4日付の報告書の中で言い切った。

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  シカゴ商品取引所の小麦相場は、東欧の大農業国の決定に直ちに反応した。干ばつによる欧州一帯の不作懸念も手伝い、1ブッシェル(約27キロ)6ドル程度から9ドル近くまで急騰した。

  国内の輸出業者や欧州などから小麦輸出再開の突き上げを受けたウクライナ政府は当初、「近いうちに禁輸を解く」と繰り返した。ユーリ・メルニク農相は「10月1日には輸出が再開される」と輸出業者に保証。ビクトル・スラウタ副首相も「500万トンぐらいの輸出は可能ではないか」と楽観的な見通しを語っていた。

  しかし、9月になると、同副首相は否定的な発言に転じた。「穀物輸出の問題は、国家の食料安全保障が確約された上でなければ検討しない」。9月30日の繰り上げ最高議会選挙を前に、与野党でし烈な争いが行われている中、国民の反発を招きかねない主食の輸出再開は、政治的に採りえない選択だった。

  もう一つ、政府が決断をしにくい事情があった。国内の統計が整備されていないため、正確な小麦の収穫量や在庫量を把握しきれない。国際相場が高いからといって輸出に回せば、結果として国内で不足を招いてしまう恐れがあったのだ。

  禁輸の裏側に国内の汚職がからんでいるという見方もあった。閣僚の中には大型養鶏農場の株主がいる。「禁輸措置の継続で国内相場が下がり、飼料代が数百万ドル節約できた」という観測だ。

  ウクライナで穀物は極めて政治的な作物だ。政府は肉や乳製品、果実、野菜であれば価格の上昇も容認する。しかしパンやパスタの価格が上がることは許さない。

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  小麦の禁輸が解け、163の業者に120万トンの輸出割り当てが出されたのは今年2月4日だった。だが、小麦の輸出が本格的に動き出すには時間がかかる。

  「穀物倉庫の処理能力が低く、今抱えている在庫を積み出し終わるのは7月」と大手の穀物業者ニブロン社のアレクセリ・バダトルスキー社長は言う。ウクライナ穀物協会のウラディミール・クリメンコ会長も、正式な輸出許可を得るまでは輸送船の手配をしない。「昨年夏に政府の禁輸措置で輸出契約をキャンセルさせられた」という苦い経験があるからだ。

  気まぐれな政治の決断に振り回された記憶が、東欧の穀倉地帯での「輸出解禁」の足取りを重くしている。

◇ウクライナの輸出規制は事実上の禁輸である=キエフ駐在の米農務省担当官






 


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