進路予想に異例のずれ 気象庁「関東経て東北へ」 米軍機関「中日本を縦断」(動画あり)
台風発生の基準は気象庁とJTWCで異なり、同じ台風でも号数がずれるケースがある。今回もそうで、気象庁は5日午後10時、大東島の南で「13号」が同9時に発生したと発表。JTWCは6日正午までに「12号W」の発生をウェブサイト上に掲載。Wは西太平洋の頭文字を指す。
当初は双方とも千葉・房総半島の東端をかすめ、三陸沖へ進むと予測した。変化は6日午後3時に表れ、気象庁は8日ごろに房総半島南端から上陸して関東、南東北を縦断すると予測。JTWCは同半島の東岸に当初予想とほぼ同じで上陸はせずに三陸沖へ抜けるとの見通しを示した。
7日には双方とも進路を西寄りへと修正。気象庁は上陸地点を伊豆半島付近とし、JTWCは東京湾を縦断すると予想。午後3時には双方とも静岡県付近と修正したが、上陸後の進路が大きく変わった。
8日午前、上陸日は双方とも同日夜とし、気象庁は静岡県東部から関東、東北南部を通るコース。JTWCは愛知、静岡の県境付近から長野、新潟へ北上し、日本海に抜けるルートを予測した。
ところが同日午後3時に一転、気象庁は上陸前の同日夜にも熱帯低気圧に変わるとの見通しを示した。
近畿を縦断した7号でも予想上陸地点などで違いはあったが、今回のように方角まで異なるのは珍しい。気象庁予報課の担当者は「予想進路の中心線は異なるが、(予想進路の幅を示す)予報円を見れば、JTWCと大きく違うとは思っていない」と述べた。
「悪い方の予測」で備えよう 現役農家で気象予報士の田辺健さん
兵庫県JAあわじ島のGAP部会長を務め、南あわじ市の農家で気象予報士でもある田辺健さん(42)に、気象庁と米軍機関とで台風13号の予想進路が異なった背景と農家が取るべき対応を聞いた。
視点は二つあり、一つは勢力の程度。台風は中心付近の風が最も激しく、強い勢力なら、進路予想は被害の有無に直結する重要な情報になる。
13号の勢力は強くなく、進路より「どこで雨が降るか」の予報が最も重要になった。今回に限っては雨予報ができていれば、予想進路の違いによる影響はなかったと考えている。
もう一つは、予想を難しくした偏西風の蛇行や上層寒冷低気圧(UCL)の存在。特に時計回りに循環しているUCLは、台風の進路や勢力を変える。12号の勢力が衰えた原因もUCLだった。
気象庁も米軍もスーパーコンピューターの解析結果にその時々の気象環境を掛け合わせ、幾通りの予想の中から選択する。今回はそのばらつきが違いを生んだとみられる。
進路予想の違いはこれからもあると思う。農家は、自分にとって「悪い方の予測」で準備してほしい。