新茶の季節。近年では、茶摘みを体験できる施設・茶園が目立ってきた。摘み取った茶葉を自宅に持ち帰り、この時期ならではの一番茶を手作りで楽しんでみたい。体験茶園を手がけたことのある、静岡県牧之原市の赤堀有彦さん(71)に、製茶方法を聞いた。
使うのは、ホットプレートと電子レンジ、ラップ、キッチンペーパー、手袋の5点。茶の生葉は200グラムほど用意する。これは、毎日、1杯ずつ飲んだときに1週間分の茶ができる計算だ。
収穫した生葉は、収穫した日のうちに製茶する。当日が難しいなら、日陰に広げて3日以内、冷蔵庫に保存する場合でも5日以内に使う。
最初の工程として酸化を止めるため、殺青(さっせい)を行う。生葉を100グラムずつラップに包み、電子レンジを使って500ワットで1分30秒加熱する。茎が折れずに、しなるようになれば加熱完了だ。ポキッと簡単に折れてしまう場合は、追加で10秒ずつ温める。
キッチンペーパーに生葉を広げ、5分ほどおいて蒸しつゆを取り除く。その間にホットプレートを用意する。保温にして温まったら、生葉を広げる。
次が茶ならではの、もみ工程だ。やけどをしないように手袋をする。軍手よりも、綿の手袋の方が葉や茎が引っかかることがなくてもみやすい。最初の15分程度は、強く抑えずに優しく、生葉全体をこねて回す。だんだんと力を強くして、生葉の水分を外に押し出すようにもみ込む。玉になった茶葉をほぐしながら、乾燥させる作業も加えていく。全体的に深緑色になるまで、50分ほど行う。焦げないように、ホットプレートの温度を適宜、調整する。
仕上げは形を整える、こくり工程だ。ホットプレートで保温乾燥させながら、両手で茶葉を挟み込み、こすり合わせて針のようなピンとした形にする。茶葉がポキッと折れるようになるまで行う。
形ができたら、ホットプレートの電源を落とし、余熱で5分ほど乾燥させる。焦げないように適宜、攪拌(かくはん)して完成。全体で1時間15分ほどの工程だ。プレートに付いた茶渋は、湯や水で洗い流せる。
赤堀さんは「一番茶は、5月までの限られた期間に製造するもの。急須で茶を入れ、ゆったりと旬の味を楽しんでもらいたい」と話す。
<メモ>
リーフ茶の消費が低迷している。総務省の家計調査によると、2023年の1世帯当たり年間消費量は、過去最低の676グラムとなった。リーフ茶の支出金額は07年に茶飲料に抜かれ、23年は3214円にとどまる。緑茶を急須で入れて飲む習慣がリーフ茶の消費拡大につながる。産地では、緑茶に親しんでもらおうと、茶摘み体験や製茶方法の指導を展開する。